春秋山荘 狐娘展 | ハザマランド

春秋山荘 狐娘展

 山の麓はまだ寒く、春は降りていなかった。

 春秋山荘の板間は靴下越しでも冷たい。部屋の明かりは抑えられ、危うい眠りを誘う。

 灯ったのは狐で彩られた品々だった。壁にかかった狐面に、小机の孤頭根付け、床の間の狐玉、座敷には尾のある少女が横たわる。

 けぇん。

 庭で鳴き声がした。

 縁側に立つと、羽衣がたなびいている。 

 春が、揺れて微笑っていた。