待春(たいしゅん) | ハザマランド

待春(たいしゅん)

 花びら小びら。梅は開いても、まだ寒く、鳩は首を竦めている。春はまだかとカメラを持つ手を擦る。冷たい風に薄鈍(うすにび)の雲が流れて、線路脇に日が差した。気の早い菜の花が一本だけ咲いていた。
 もうすぐだ。
 濡羽色の機関車が乳白色の蒸気を噴いた。高い汽笛が空へと抜けた。